第17回エイブル空間デザインコンペティション
28㎡の創意工夫
~ワンルームの新たな可能性~
グランプリ作品が決定!

第17回 エイブル空間デザインコンペティションのテーマは「28㎡の創意工夫~ ワンルームの新たな可能性 ~」。賃貸住宅への自由な発想を募集しました。グランプリを受賞した作品を実物大模型として展示、最終審査に臨んだ他7組の模型とともに紹介します。

審査委員長

谷尻誠

建築家

審査委員

成瀬友梨・猪熊 純

建築家

 

茂木健一郎

脳科学者

 

平田竜史

(株)エイブルホールディングス
代表取締役社長

会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)

    港区南青山5-6-23
会期:2025年11月7日(金) – 9日(日)11:00 – 20:00
   入場無料  ※最終日は19:00閉場
主催:株式会社エイブル 
協力:DESIGN ASSOCIATION NPO / IMAGINE大学


架構と余白の挿入

森川 隼

京都工芸繊維大学大学院 木下研究室

従来のワンルームは、暮らしの多様さや外部との関わりを受け止めきれていないのではないか? 本提案ではRCの躯体に木架構をずらしながら挿入することで、奥へ進むほどに拡がる土間を設けた。段床の高低差やシルバーの壁面が柔らかな光を導き、奥行きを生み出す。土間はバルコニーと連続することで、作業場にも食卓にも庭にも変わる。挿入された木架構によって、使い方が定義されない様々な余白がワンルームに生まれる。完成されたかたちを提示するのではなく、住まい手の創意工夫や関わり方によって常に更新される住まいである。その奥へと誘う構えは、伝統的な町家の奥行きを思わせながらも新しいワンルームの姿を提示している。

グランプリ受賞コメント:
この度は、グランプリという名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。ワンルームという限られた空間の中で、新しい建築のあり方を考えることは、難しくもあり、同時に、すごく楽しい時間だったと感じています。審査員の方々の前でプレゼンする機会をいただき、このような評価をいただいたことに感謝いたします。ありがとうございました。

審査員講評

谷尻 誠

和風とは言えないのに、ちゃんと和のエッセンスを持っているのがすごく良いんですよ。構造的に見れば、あの105mmの柱は必要足り得ないですよね。でも、それをあえて使うことで、逆に空間を生み出している。この空気感、ぜひ実物大で見て、体験してみいですね。

成瀬友梨

私は、105mm角の角材だけで構成されているのがすごく面白いと思いました。そこに、ちょっとスクリーンをつけたり、板を渡したりするだけで、住む人にとって使いやすくて、生活が楽しくなるような暮らしが簡単に実現できる柔軟性が素晴らしいです。

猪熊 純

よくできている!一見すると平面的な提案も、実は床がだんだん下がっていったり、奥行きが計算されている。特に、狭い入り口からバルコニーまで開けていくダイナミクスが素晴らしい。グリッドに収めながら空間体験を詰め込んでいるのは見事です。

平田竜史

町屋とか土間の要素を取り込んで、まさに京都らしい。京都ってみんなが大好きな場所で、その伝統の風味を賃貸という形で提供するからこそ意味があるんです。賃貸だからこそ挑戦できる、『一度は住んでみたい』と思わせる、市場としても魅力的な提案ですね。

茂木健一郎

最初に見た時の第一印象はそれほどでもなかったんですよ。ただ、やはりプロの審査員の方々のコメントを聞くと、この提案の持つ隠れた意図や空間的な面白さが改めて見えてきましたね。そこから、この案に対する私の注目度がぐっと上がりました。


回廊と谷

正清裕大・飯嶋真由

東京理科大学大学院(正清)
京都工芸繊維大学大学院(飯嶋)

回廊と谷。この建築は二つの要素によって構成されます。
“谷”と呼んでいるお椀型の空間には、キッチンや寝室、リビングなどの滞在空間が配置されており、そしてそれらの入り口となる空間が“回廊”として巻き付いています。
谷によって、“ひとへや” に対し、立体的に人の居場所が生み出され、回廊によって、廊下という消費されるだけの空間から、心地の良い居場所へと変容しています。
そのように、この提案は平面的な“間取り”という概念を問い直した作品となっています。

セミグランプリ受賞コメント:
近年では、リノベーションやワンルームの設計、店舗デザインなど、何か規定がある状態から設計することは、国内外問わず主流になっています。これからの時代に“建築”を考えていく身として、インテリアとしてではなく建築としてどのようにアプローチできるかを模索をした結果の作品が評価していただけたことは大変これからの励みとなりました。空間の良さを伝えるために細部まで模型も作りこんでいるので是非ご覧いただけると幸いです。


名前が遅れてやってくる場所

宮田太郎

日本大学理工学部建築学科佐藤光彦研究室

たとえば、一つの敷地にの異なる部屋を多く持つことができたなら、桂離宮のようにそれはもう立派な屋敷と呼ぶことができるかもしれません。しかし、複数の部屋を持っていたとしても、特別な設計でない限り全ての部屋を同時に知覚することはできません。平面図とは全体を知覚できない私たちに複数の部屋や断片を同時認識させる道具だったというわけです。したがって、今自分のいる部屋の隣に、あるいはその隣に、部屋が同一平面上に並んでいるという同時存在よりも、複数の異なる性質の部屋を所有し経験することの方が空間の広がりを受け取ることができます。つまり、隣に部屋が実際にあるということは感覚的な空間の広がりには影響しないのです。今回は空間の広がりに対するイメージをこのように仮定することで、居室面積が28^mのワンルームでありながらもうひとつの暮らしとして性質の異なった部屋を所有できる複数形の賃貸住宅の空間を考えます。そのために、まだ名前の付いていない空間に名前が遅れてやってくることで結果的に複数の部屋を生産できる装置との暮らしを考えました。

特別賞受賞コメント:
この度は特別賞という名誉のある賞をいただき誠に大変光栄に思っております。また、企画や運営をされている様々な関係者の方々にも深く御礼を申し上げます。振り返れば、様々な案のスタディスケッチから少しの可能性を信じて手に取った1案が多角的な解釈によってどんどん面白く見えてきたことを思い出します。このように全く想定していなかったところに降り立ってしまうことにいつも建築設計の浪漫を感じます。


二断面の家

小野寺陸人・大滝一郎
東京大学工学系研究科建築学専攻川添研究室

2021 年、彼女は大学に入学すると同時にワンルームで1人暮らしを始めた。ところが新型コロナウイルスの影響により授業はオンライン、ステイホームを余儀なくされた。本来ならば自宅と大学という2つの世界を行き来するはずであったが、ワンルームという変化のない1 つの世界の中で1日の生活を終えるという日々を送っていた。ある日、ふと今の住まいに2つの面が現れたらどのような生活になるだろうかと想像を膨らませた。本設計はここから始まる。一般的な賃貸住宅は、住む人が手を加える余白がないように設計されている。コロナ下では多くの人の生活がワンルームの中で完結した。彼女には、二断面のある空間が必要だったのかもしれない。こちらから見ると、その向こう側にはもう一つの世界が広がっていて、向こうから見るとこちら側にもう一つの世界が広がっている。これは、外に出られない日々の中で、住まいに「もう一つの世界」潜ませ、芽生えさせる提案である。

おとなごころのある部屋

国本春樹・小山咲紀子
東京都立大学大学都市環境科学研究科建築学域

私たち大人は、物分かりが良くなる一方で、多忙な日々に追われ、日常に潜む小さなワクワクを見つける心を忘れてしまっているかもしれません。本提案は、そんな大人の「おとなごころ」をくすぐるワンルームのあり方を示します。「おとなごころ」とは、子どもの純粋で無邪気な心に対して、大人になっても誰もが持ち続けている“少し大人びた子供心”のことです。その心をくすぐるために、従来の機能や効率が重視された住まいに“遊びの要素”を仕掛けました。すると、従来の形態や機能に解釈の余白が生まれ、日常生活の中で思わずやってみたいと思わせる行動を誘発します。6つの遊びを取り込んだこのワンルームは、単なる生活の器を超え、住み手それぞれにとっての宝物のような暮らしと空間を紡ぎ出します。大人になったからこそ味わえる、あの時みたいな気持ち。この部屋は、そんな気持ちを取り戻す場所です。

緊張と緩和にくらす

小松史門
芝浦工業大学建築学部建築学科

ワンルームは均質さゆえに安心感を与える一方で、暮らしは単調に陥りやすい。そこで、落語家・桂枝雀が提唱した「緊張と緩和」という笑いの理論を空間に応用した。人は張りつめた状態から解放される瞬間に安堵やおかしみを覚える。その心理構造を建築に置き換え、狭さや段差、視線の抜けや遮り、硬質と柔らかな素材の対比によって身体や感覚に起伏を与える。28㎡という限られた一室に、相反する心理状態を共存させることで、日常の動作の中にリズムや彩りが生みだす。緊張があるからこそ緩和は際立つ。ワンルームは、効率的な器から感情の豊かさを織り込む新しい住まいへと転換する。

人と物の部屋

須川陽斗・山本貴心
近畿大学建築学部 竹口研究室(須川)松岡研究室(山本)

日々の生活を豊かにするため、あたらしい物を手に入れ、部屋に置く。そんなごく普通の行為は私たちから自由な暮らしの領域を奪っていた。人のための空間と物のための空間。同じようで異なる性質の場の新しい在り方として空中のオープンストレージと広大なリビング空間を提案する。
宙を舞うように高さの異なるストレージの形状は人のための空間を包み込むように弧を描き、収納されるものは必然的に人間の空間と呼応する。
賃貸の限られた室内の中で浮遊する物と床面積をめいっぱい使う私たちは互いに空間を最大化し、拡張された接触面を通じて新たな関係性を生み出す。

一室多境

山田 陸斗
近畿大学大学院

誰しも経験があるのではないだろうか。同じ部屋で長時間居ると集中力が途切れたり、気分が沈んだり。そんな時、場所を変えると急に集中できたりすることがある。人間にとって気分転換ができる居場所は大切である。そこで、壁にも天井にもなるL字をワンルーム内に複数配置することで、ワンルームに多様な居場所が現れる。居住者はその時々の気分に合った居場所を選択し、居場所を変えながら気分転換をワンルーム内で行う。L字が「一室」の中に「多用な境」をつくり出し、28㎡という小さな空間を「一室」に留めず、「一室多境」として、居住者の多様な気分と暮らし方を受け止められるワンルームである



開催概要

「エイブル空間デザインコンペティション」は、大学生・専門学校生を対象に空間のデザインプラン・模型に加えてプレゼンテーション力がを競うコンテスト。書類審査を通過した6 組がYouTube「IMAGINE 大学」に出演し模型とパワーポイントで空間デザイン案をプレゼンテーション。
グランプリの作品は、スパイラルガーデン(東京・青山)に実物大展示します。


募集要項

テーマ

28㎡の創意工夫

~ ワンルームの新たな可能性 ~

設定空間 諸条件

ワンルーム28㎡
(幅4m×奥行き7m×高さ2.4m)の賃貸住宅空間

バス・トイレ・キッチンを設置
(ユニットバス可)

審査基準

賃貸住宅における新たな空間デザイン
また、模型の完成度を高め、インパクトと説得力のある表現で観客を魅了するプレゼンを行えること。

応募方法

テーマに添った空間デザインをコンセプトシートにて下記のエントリーフォームより応募
コンセプトシートのファイル形式はPDFとし、1枚目には、学校名と応募者名を記載すること

お問い合わせ

info@designassociation.jp

参加対象

大学生・大学院生・専門学校生・高専生
プレゼン審査において、模型を用いたプレゼンテーションができること

応募締切

2025年8月31日(日)

2次審査(プレゼン)

2025年9月25日(木)

1次審査に通過した6組は9月25日(木)にIMAGINE大学スタジオで行われる最終プレゼンに、
審査員の前で模型+パワーポイントで参加いただき、グランプリを決定していきます。


グランプリ
賞金 20万円 +
スパイラルガーデン(東京・青山)での作品の実物大展示

セミグランプリ
賞金 10万円

入賞者
キャリア支援プログラム「エイブルデザインチーム」の活動に参加する権利を付与

近年のグランプリ受賞校

第16回(2024)武蔵野美術大学
第15回(2023)京都工芸繊維大学大学院
第14回(2022)京都府立大学院
第13回(2021)神戸大学工学部
第12回(2020)京都府立大学大学院
第11回(2019) 明治大学建築学科
第10回(2018)東京大学建築学科

エイブルデザインチームとは

株式会社エイブルが学生キャリア支援プログラムとして、 2016年から賃貸物件のリノベーションをデザインする「エイブルデザインチーム」を発足。
エイブル空間デザインコンペティションの入賞者で構成されるエイブルデザインチームは、賃貸物件オーナーに向けてリノベーションデザインを提案したり、企業と商品化に向けたデザイン提案を行うなど、学生生活では経験できない様々なプロジェクトに参加することができます。

グランプリ展示

グランプリ作品をスパイラルガーデン(東京・青山)にて実物大展示いたします。

グランプリ受賞者が作成した設計図面を基に、事務局が手配する施工会社が
本人の立会いのもと施工させていただきます。

展示期間:2025年11月7日(金)~9日(日)
会  場:スパイラルガーデン(東京・青山)

※新型コロナウイルスの影響によって、グランプリ作品の会場での実物大展示が中止され、
オンラインでの最終審査~特設サイトでのグランプリ作品発表となる場合もございます。あらかじめご了承ください。

Youtube「IMAGINE大学」放送

審査の模様やスパイラルガーデン(東京・青山)でのグランプリ作品展示をYoutube「IMAGINE大学」でご紹介いたします。

※参考 グランプリ決定!第16回エイブル空間デザインコンペティション審査の裏側

主催

株式会社エイブル

協力

DESIGN ASSOCIATION NPO

運営

TOKYO COMPANY 株式会社


審査委員

谷尻 誠(審査委員長)

Makoto Tanijiri.jpg

建築家

1974年 広島県生まれ
1994年 本兼建築設計事務所
1999年 HAL建築工房
2000年 建築設計事務所suppose design office 設立
2014年 SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰
2001年- 穴吹デザイン専門学校非常勤講師
2011年- 広島女学院大学 客員教授
2012年-2016年 武蔵野美術大学 非常勤講師
2014年-2016年 昭和女子大学 非常勤講師
2015年- 大阪芸術大学准教授

社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、Bird bath & KIOSK、tectureを経営
https://suppose.jp/

成瀬 友梨(審査委員)

第1回エイブル空間デザインコンペティション グランプリ受賞

成瀬・猪熊建築設計事務所 / 一級建築
1979   愛知県生まれ
1998   愛知県立一宮高等学校卒業
2002   東京大学工学部建築学科卒業
2004   東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 修士課程修了
2005-06  成瀬友梨建築設計事務所主宰
2007   東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程単位取得退学
2007   成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立
2008-09  東京理科大学非常勤講師
2009   東京大学特任助教
2010-17  東京大学助教
2022~  グッドデザイン賞審査委員

https://www.narukuma.com

猪熊 純(審査委員)

第1回エイブル空間デザインコンペティション グランプリ受賞

成瀬・猪熊建築設計事務所 / 一級建築士
1977   神奈川県生まれ
1996   栃木県立宇都宮高校卒業
2002   東京大学工学部建築学科卒業
2004   東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 修士課程修了
2004-06  千葉学建築計画事務所勤務
2007   成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立
2008~  首都大学東京助教
2014   明治大学非常勤講師
2014~  神奈川大学非常勤講師
2015~  東北大学非常勤講師
2018-21  グッドデザイン賞審査員
2024   芝浦工業大学教授

https://www.narukuma.com

茂木 健一郎(審査委員)

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脳科学者

ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
1962年10月20日東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専門は脳科学、認知科学。
「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』で、第四回小林秀雄賞を受賞。
2009年『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
Youtube『IMAGINE大学』メインMC。

トラウデン 直美(審査委員)

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モデル・タレント

京都府出身。ドイツ人の父と日本人の母を持つ。
「2013ミス・ティーン・ジャパン」でグランプリを受賞。
13歳で小学館「CanCam」の史上最年少専属モデルとしてデビュー。
2021年7月発売のCanCam9月号にて、専属モデル歴史上最長記録を更新。
雑誌やファッションショーのほか報道や情報番組でも活躍中。
2021年1月より「環境省サスティナビリティ広報大使」を務める。

平田 竜史(審査委員)

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株式会社エイブルホールディングス 代表取締役社長


審査フロー

一次審査

書類審査

プレゼン審査

書類通過者 最大6組による 模型&プレゼンテーション審査(8月 東京都内にて開催)

グランプリ・セミグランプリ決定

エイブル空間デザインコンペティション優秀作品展

 2025年11月7日(金)~9日(日)スパイラルガーデン(東京・青山)にて開催。
グランプリ作品の実寸大展示のほか、優秀作品の模型を展示予定